平成8年〜11年1月及8月の麻酔科そせい科当直手当ての支給に関する資料と当直日誌の開示請求に関する参考資料

更新日:2002/5/5

請求情報

項目

異議申立書

2001/9/19 情報公開審査会宛

「諮問番号:平成13年諮問第114号
事件名:九州大学医学部附属病院の勤務時間報告書及び当直日誌の一部開示決定に関する件」への意見書

1、「個人の所得の一部が公になる」ことが個人の権利利益を害するという主張について

 九州大学附属病院より提出された「(1)勤務時間報告書の氏名部分を不開示決定した考え方及びその理由(2)当直日誌の宿直者及び日直者の氏名部分を不開示決定した考え方及びその理由」 によると、「宿日直手当の単価が分かり、個人の所得の一部が公になるおそれがあり、また、この勤務時間報告書には超過勤務時間数、特殊勤務手当、俸給半減等の記載欄も設けられており、これらの欄の記載事項はたとえ不開示としても、氏名を開示すれば、個人の勤務状態の一部が推定されるおそれもあり、結果として個人の権利利益を害するおそれがあるため、情報公開法第5条第1号に規定する個人に関する情報の不開示情報に該当するものと考える。」と主張している。しかし「個人の所得の一部」が公になることが、「個人の権利利益を害する」のであれば、公務員の勤務に関して「会議、懇談会等への出席」「出張」等の氏名の公開はすべて「個人の勤務状態の一部が推定されるおそれもあり、結果として個人の権利利益を害するおそれがある」ため非公開という現在の情報公開制度では考えられない事態になってしまうことになる。全ての公務員は「公にされている給与関係の法令など」により「個人の所得の一部」が推定されているのであり、病院側の主張は現状の情報公開制度の趣旨と実態をふまえない暴論といわざるを得ない。

 今回争点となっている氏名部分について病院側は「具体的職務の遂行と直接関連を有する情報」ではなく「職員の人事管理上、保有し管理される情報であり、職員の個人情報として保護される必要がある」と主張するが、具体的職務の遂行と直接関連のない「個人の勤務状態の一部」で保護されるべき個人情報となるのは、病気での欠勤、有給休暇などの「職務と直接関連のない」ものを指すのであって「宿直者、当直者の氏名」は宿直、日直という病院での責任ある職務であり「具体的職務の遂行」そのものであり、公的な病院が宿直者、日直者の氏名を公開しないということは公的責任を果たしていないということになる。さらに、現在の地方自治体では個人の病欠等を除いて職員勤務表に関しては公開している。

2、「宿直、日直は公務員の職務遂行に当たらない」との主張について

 病院は「情報公開法第5条第1号のハとともにイが重畳的に適用され、不開示とならないとされているが、この規定の対象となるのは、具体的な職務の遂行と直接関連を有する情報であり、本件当直日誌に記載されている情報は、・・・宿日直者個人の勤務態様に係るものであり、・・・職員の人事管理上、保有し管理される情報であり、職員の個人情報として保護される必要があり、この規定の対象とはならないものと考える。」と述べている。
 ところが、今回の氏名は業務と直接関連したものであることは明白であり、「理由説明書」には「宿直、日直は公務員の職務遂行に当たらない」との主張について、まったく説明が行われていない。この「職務遂行ではない」という説明を抜きに「宿直者の個人情報」という主張は根拠がないものである。
 この点について次のような判例がある。
「職務執行に際して記録された当該公務員の役職や氏名は、公務を執行した者を特定し、場合によっては責任の所在を明示するために表示されるに過ぎないものであって、個人としての行動や生活に関わる意味合いを含まない。したがって、プライバシーが問題になる余地はない。」「情報公開との関係で言えば、県民側としては県政に対する理解を深めるためには、これ(公務)を執行した担当者及びその相手方となったものについての情報も出来るだけ具体的に開示される必要がある。そうすることによって県政の検証、その当否の判断が可能となる」(宮城県食糧費情報公開請求裁判、仙台地裁判決、判例時報1575号31頁)と明快に判断している。
 今回の 九大病院の提出した資料によると病院各科で医師名を「公務を執行した者を特定し、場合によっては責任の所在を明示するために表示」している。宿直勤務を行ったという記録は、この附属病院での各科窓口やベッドでの担当医師名公表となんら変わることはなく当然公開されるべきものである。

3、変化する非公開理由について

 当該文書を九州大学総務部情報公開担当者より受け取った際、窓口担当者に対して「なぜ氏名が公開されないか?」とたずねたところ「個人名はプライバシーであり宿直医師の中には身分上国家公務員でない者も含まれているので公開できない、という病院側から説明がされた」との回答であった。今回の九大病院側からの「不開示の考え方、理由」の中には、「国家公務員でない医師が含まれている」との理由は見あたらず、また公開時には「所得の一部が公開されるから公開できない」という説明は行われていない。すなわち5月24日時点での公開する際の請求者に対する説明は十分検討されていない「思いつき」で行われたと言わざるを得ない。
 すなわち、公開しないとの結論が先にあり、その後、情報公開審査会への意義申立に際して理由を変えて、今回の「諮問の理由説明書」での理由になっているものと思われる。

以上、九州大学附属病院の非公開の理由は不当なものであり、今回の公開請求は福岡におけるマスコミも取り上げており市民も注目している重要な問題である。情報公開審査会の十分な検討と適切な判断を求めます。